連載 考える
続・家族の肖像・4
父と息子
柳原 清子
1
1日本赤十字武蔵野短期大学
pp.368-373
発行日 2000年4月1日
Published Date 2000/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903451
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秋晴れの空の高さをまばゆく感じながら,赤柴さんの家を訪ねた.そこは武蔵野の面影を愛して戦後に多くの文化人が住んだという,静かなたたずまいの街である.番地を求めてキョロキョロしていたら,ばったり赤柴さんの奥様に出会った.出迎えのために交差点の角で待っていて下さった由.「主人たら,ちょっと緊張しているわよ」と茶目っ気たっぷりに奥様が告げ口する.
赤柴さんは,働き盛りの息子さんを看病された方である.日取りの相談の時「その日なら合唱団の練習もないし大丈夫です」という.赤柴さんは歌うことが趣味で,長い間,市民合唱団にいて,定年後はマネージャーも兼任しているとのこと.おだやかさが人柄ににじむ方であった.テーブルの上には,手帳,ワープロで整理された経過日誌,アルバムなどが出され,準備万端という感じである.
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