実践報告
医療依存度の高い在宅療養者の防災における危機管理意識の向上―避難移送シミュレーションを実施して
岡 由美子
1
,
西村 康子
1
,
津禰鹿 篤子
1
,
村尾 妙子
1
1公立豊岡病院組合立豊岡病院地域医療室
pp.56-61
発行日 2009年1月15日
Published Date 2009/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101240
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はじめに
長時間の停電による医療機器の停止など,医療処置の必要な在宅療養者は,一般の人より災害によって生命の危機にさらされる可能性が高い1)。近年A病院の訪問看護を利用している在宅療養者も,台風による水害のため,酸素不足や痰による窒息など生命の危険にさらされ,さらに救急搬送が不可能であるという状況にみまわれた。この時医療機関は緊急時対応の指導として,連絡方法は指導していたが,災害を想定した具体的な対応策の指導は行なっていなかった。そして,この時の初期対応が遅れた原因として,看護師および療養者・家族の危機管理意識が低かったことが考えられた。
小田らは「緊急・災害時支援システムを構築し,シミュレーションを通じて災害時の初期行動が具体的にイメージでき,双方の危機管理意識が高まった」2)と述べている。そこで被災後の実態調査を通して水害体験を活かした安全対策を検討し,医療依存度の高い在宅療養者に防災訓練として停電時の対応と移送シミュレーションを実施した。しかし,その際は療養者と介護者のみの参加であったため,自分たちで行動が起こせるまでには至らなかった。
その課題をもとに,介護者だけでなく日頃介護していない家族や近所の支援者へ訓練の参加を要請し,具体的な避難場所や避難方法を設定した上でシミュレーションを実施した。この訓練を通し“自分たちで行動が起こせる”体制づくりに一歩近づくことができた。防災訓練の内容を報告するとともに,防災への意識を高められた訓練の効果を報告する。
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