忘れえぬ人びと
患者を東京へ移送
榊原 宣
1
Noburu SAKAKIBARA
1
1十全会心臓病センター榊原病院
pp.978
発行日 2002年7月20日
Published Date 2002/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407904928
- 有料閲覧
- 文献概要
とにかく手術は終わった.患者を手術室から術後回復室に移した.受持医として術後の処置を指示票に,手術所見をカルテに記入し,摘出標本を整理した.摘出標本の大きさは5.5×8.5×3.3cm,重量は120gあった。硬度はほぼ一様で,弾性硬であった.結合織性の薄い被膜で覆われていた.割面は実質性で帯黄白色髄様であった.
手術患者の受持医は手術当日一夜泊ることになっていた.一仕事済ませたので,宿直室で寝ようと思った.当時,岡山大学病院第1外科の宿直室は10畳のタタミ敷だった.ここに数人分の布団を敷き,そこでゴロ寝する.9月初旬といえば,まだ蚊の季節.宿直室には10畳の大きな蚊帳が吊ってあった.この蚊帳にもぐりこもうとしたところ先に寝ていた先輩に大声でどなられた.「一人前の医者でもない者が蚊帳に入って寝ようとはなんだ,」蚊帳から追い出されてしまった.「蚊帳の外」ということを実感させられた.
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.