連載 ほんとの出会い・30
あるがままに生きることの難しさ
岡田 真紀
pp.783
発行日 2008年9月15日
Published Date 2008/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101165
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先日,20年ぶりにアメリカに行った。長年の女友だちがアメリカ人との結婚式をラスベガスで挙げるというので,思いきって参列したのだ。ラスベガスは月面に造り上げたような人工的な街で,日陰でも40度を超す緑一つない土地に,巨大ホテルを林立させ,ガンガン冷房で冷やし,ホテルの中に花壇や運河を作って緑や水を見せる。エネルギーの恐るべきこの無駄遣いは,天も恐れぬ振る舞いに感じられた。
「こんなことしていいのかねえ」と私と一緒になってあきれていたのが,エッセイストの朴慶南さん。花嫁が共通の友人だったご縁で,行きの飛行機からホテルも同室だったのだ。お会いしたしょっぱなにおっしゃったのは,「私が出かけると周りで何か起きるの」。果たして,機内のどこかで叫び声が聞こえたかと思うと何やら慌ただしい雰囲気がする。間もなく「お医者さんがいらしたら来てください」とのアナウンス。病人だったらしく,これは無事に解決。しかし,帰りの搭乗手続きでは普通はパスポートを機械に入れれば搭乗券が出てくるのに,慶南さんはカウンター行きを指示され,延々待たされて危うく飛行機に乗り遅れそうになる。でも,アナウンサーを志したこともあるという柔らかな声で,「命さえ忘れなきゃ大丈夫」と慶南さんは泰然自若。
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