特集 成人の「発達障害」を理解する
広汎性発達障害者の時間と空間
細川 雅人
1
1大阪市城東区保健福祉センター
pp.737-742
発行日 2008年9月15日
Published Date 2008/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101152
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はじめに
発達障害者支援法によると,「自閉症,アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害」は,「脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」となっており,想像力の障害とこだわり,コミュニケーションの障害,社会性の障害という,3つ組の障害を共通して示す。また,部分にとらわれて全体を把握することが困難で,全体的な時間の流れをつかむことや場面相互の関連性をつかむことも難しいという,共通の特性がある。特定の事物,習慣,行為などにこだわる,言葉の理解の仕方が特異で会話がトンチンカンになる,あるいは場の雰囲気をつかめないために対人関係や社会生活のトラブルが起こるなど,3つ組の障害の現れ方はさまざまである。
筆者は,大阪市知的障害者更生相談所で約1000人の知的障害者の記録を調査し,そのうち,広汎性発達障害をあわせもつと思われる300人以上の特性を調べた経験がある。エピソードを調べてみると,聴覚情報をうまく処理できないために視覚優先型になっている人がほとんどで,目で見た文字や画像の意味と,耳で聞いた言葉の意味を瞬時に結びつけられないことから,さまざまなトラブルが起こっている。聴覚と視覚を統合する機能が不十分だと,事象や言語の意味が重層的に記憶されない。このために,想像力が働かなくなって支障が生じるわけで,その観点から,認識特性と3つ組の障害との関係を考えてみた。
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