特集2 医療福祉の倫理を考える
医療福祉現場で出会う倫理的ディレンマへの対処
菊井 和子
1
,
斎藤 信也
2
1関西福祉大学看護学部
2高知女子大学看護学部
pp.467-469
発行日 2008年6月15日
Published Date 2008/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101089
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世界一の長寿国が直面している介護問題
20世紀の中ごろまで,医療と福祉はその理念,用語,方法を異にする全く別分野の活動と考えられていました。医療は救命・延命を目的とする診療活動であり,福祉は障害者や貧困者に恩恵を施す社会施策でした。一方,そうしたなかでも,医療と福祉は近接領域として,たとえば身体障害,知的障害,精神障害を抱えた人たちについて協力しながら活動してきました。また,貧困の克服こそが疾病予防の最も有効な手段であるということも公衆衛生学と社会福祉学の共通の理解といってよいでしょう。
戦後のわが国では,現代科学の進歩と高度経済成長を基盤にして,医療と福祉が発達し,日本は世界一の長寿を誇る,豊かな国という輝かしい成果を挙げることができました。しかしそうした光の部分がある一方で,その陰として高齢者の介護の問題がクローズアップされるようになってきました。これまでは介護が必要となった高齢者は,家族によって介護されることが当たり前のことと考えられていました。ところが近年,家族の介護力は著しく低下し,家族もまた何らかの支援を必要とするようになっています。
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