特別記事
在宅介護は楽しい―期限付き介護体験からの学び
大石 杉乃
1
1東京慈恵会医科大学医学部看護学科
pp.388-394
発行日 2007年5月15日
Published Date 2007/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100871
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はじめに
2006年4月,夫の両親が夫と義弟夫婦に連れられて東京駅に到着した。77歳の母は数か月前に,ペースメーカー植替術をするために入院した病院で,心室細動を起こした。蘇生に時間を要したため,低酸素脳症に陥り,10日間ほど意識が戻らなかった。主治医からは,これ以上の回復は望めないと告げられた。
息子であり医師である私の夫は,母の状態を少しでもよくしてやりたいと自ら治療に関わることを決心し,仕事が終わってから母が入院している京都の病院に通い続けた。
母は左室駆出率(EF)7~8%で重度の心不全であり,入院中に褥瘡,ベッドからの転落,外傷などに苦しめられていた。このまま病院で最期を迎えさせたくないと家族の意見は一致し,在宅で療養できるよう京都の自宅をバリアフリーの家に建て替えることになった。しかし建て替えるには数か月がかかる。ならばその間,父と2人で私たち夫婦が暮らす東京に来てもらい,私たちの自宅で治療と介護をしたいと提案し,東京の自宅(集合住宅)を急いでバリアフリーに改造することにした。
桜の季節から大晦日までという,始めから期限の決められた在宅介護が始まった。看護系大学の教師である私が,仕事を続けながら経験した在宅介護を報告する。
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