特集 ターミナルケア再考
終末期を支えるナースに必要な条件―実態調査から見えてくるもの
荒尾 晴惠
1
1兵庫県看護大学実践基礎看護学Ⅱ
pp.469-474
発行日 2003年6月1日
Published Date 2003/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100686
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はじめに
人生の最期をどこでどのように迎えるのかについては,本人の意志のみでなく,介護者の有無や地域の持つケアシステムなど多くの因子が関わってくるが,わが国は米英国に比べて病院死の割合が多くなっている。その背景にはホスピスやナーシングホームなどの施設が少ないこともあるが,介護保険制度のもとで施設ケアから在宅ケアへの移行が期待どおりに進んでいないことも,その一因といわれている。
在宅ターミナルケアは,人々の生活の質を重視し,療養者や家族が自らの療養場所を選択できるようにするための重要な選択肢として,また医療経済の側面からも整備される必要がある。整備にあたっては,まず在宅医療のシステムを整え体制作りをすることが最優先課題であるが,急激なシステムの整備は望めない状況にある。このようななかにあっても,在宅ターミナルケアを希望した療養者や家族が安心して自宅療養を継続するために訪問看護師の果たす役割は大きく,在宅ターミナルケアに携わっている訪問看護師は,システムの整備されていない状況で悪戦苦闘しながら奮闘しているのが現状である。
そこで,本稿では,筆者らが平成14年に行なった全国の訪問看護師を対象とした調査1)をもとにして,療養者や家族が安心して自宅療養を継続するために訪問看護師に求められる条件とは何かについて述べたい。なお,在宅ターミナルケアの対象はがん患者だけではなく,高齢者のターミナルケアについても検討していくことが必要であるが,2000年にはがんによる死亡数は全死亡に占める割合が30%となり増加の一途をたどっていることを踏まえ,調査ではがん患者のターミナルケアについて焦点をあてた。
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