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はじめに
在宅療養への移行期における病院と訪問看護ステーションの連携に関する問題は,これまでに数多く指摘されている。そのほとんどが病院看護職者の行なう看護継続方法の不適切さである。訪問看護の依頼時期,訪問看護ステーションへ提供する情報,療養者と家族の意志尊重,療養者・家族指導を含めた退院準備,退院基準と時期の判断,退院後の連絡・相談窓口,そして緊急時の受け入れ体制等についてである。
これらの問題は,病院の看護職者の施設を超えた継続看護と連携に関する認識の低さとともに,現場担当者同士の自由な連携を妨げる病院の組織構造と風土が原因として存在する。つまり歴史のある大病院ほど,縦型の指示命令系統が明確で組織の安定と秩序を優先する規範を持っている。看護師は組織の一員として部局ごとの指示命令系統にしたがって規律を遵守して行動することを期待されており,これまでは看護職者同士であっても部局を超えて連携し協働していくことは難しいのが現状であった。そのため病院の看護チームが訪問看護ステーションや開業医など病院外の他の組織の人々と自由に連絡を取ることや,病棟を離れて訪問看護師とともに療養者宅を合同訪問するといった協働には,今もって大きな障壁が存在する。
病院機能が分化し急性期病院においては手術件数を増やし在院日数を短縮化し,同時に高い病床稼働率を維持していくことが経営上必須となり,病院が生き残るためにも,人々に責任ある医療を提供していくためにも,地域の保健医療福祉機関との連携が重要な課題となっている。連携を効果的に行なっていくためには,看護職者個人の努力とともに,病院という組織そのものが,地域との連携を理念に掲げ,個人の自律した判断と行動を支援する組織のあり方へ変わっていくことが必要である。
本稿では連携に関連する問題解決のために病院側が自ら取り組むべき課題が大きいことを十分認識した上で,訪問看護ステーションと訪問看護師への要望をあえて提言する。それは,お互いの期待する役割と行動についての議論の中から共通理解と信頼が生まれ,それが基盤となって真の連携は発展していくものと信じているからである。そして病院が連携システムを構築していく改革には,専門職業人としての誇りを持ち自律して地域を渡り歩く訪問看護師のエネルギーが必須と考えるからである。
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