連載 ケアの方舟・4
やさしい時計店
石原 雅彦
pp.702-704
発行日 2004年9月1日
Published Date 2004/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100551
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シンコペイテッド・クロック
大学病院ホールで定期的に開かれる,病院関係者による利用者のための癒しコンサートに,すい臓がん治療のため上京して入院中の母を連れて行ってみた。演目にL.アンダーソン作曲の『シンコペイテッド・クロック』(狂った時計)があって,苦笑いしながら我が家族を思い出す。
人が生きるということはそれ自体,かなり規則正しい生体のリズムに則したものである。規則正しさを嫌って勝手気ままな暮らしをしたいと願っても,人は自らの身体の仕組みや,取り巻く自然の摂理から逃れて,不規則に生きることは困難である。時に自ら演出し,時に否応なしに翻弄されることによるシンコペーション*,すなわち暮らしのリズムの変化による多少の緊張感を感じるのが関の山である。
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