連載 管理者日誌⑪
病院さまに,物申す
小薗江 一代
1
1わくわく訪問看護ステーションおやま
pp.144-147
発行日 2004年2月1日
Published Date 2004/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100477
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すでにこの連載で書いたが,私は,訪問看護師に転身する前は大学病院の病棟看護師だった。看護科を卒業した後は,保健師など新たな資格挑戦のために進学するか,そのまま就職して現場にでるか,選択肢は限られている。振り返ってみると,私は「看護師として何がしたいか」を明確に意識して病院を選択したわけではなく,病棟看護師としての日々の仕事を通して,自分のやりたいことがはっきりと見えてきたのだった。そして,今,在宅医療の現場にいる。ここには病院勤務だけでは決してわからなかったこと,気づかなかったことがたくさんある。
強烈に感じたのは,「医療者は疾患だけを看ていて,人間を看ていなかった」ということだ。入院生活はその人の人生の切り取られた一部でしかない。退院してもその人は存在し,日々の生活を送っている。この事実が病院では忘れ去られている。もちろん,病院には疾病の治療という最大の目的がある。だが,だからと言って,患者個人のあり方に目をつぶっていいはずがない。強く自己主張するような患者は「わがまま」とレッテルを貼られている。最近の流行で,「患者」を「患者さま」やら「利用者さま」やら呼称を変えて,さも大切に扱っているようにアピールしているが,はたして実体が伴っているのだろうか。私の執筆は今回で最後になるので,言いたいことをまとめて言ってしまおうと思う。
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