連載 診療所日誌・4
堤防からの夕焼け
小笠原 望
1
1大野内科
pp.340-341
発行日 2005年4月1日
Published Date 2005/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100128
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明日死んでもいい夕焼けを見てみたし
学生時代,その日届いた1通の手紙を胸のポケットに,弘前から高知への列車に乗った。翌日は試験だったが,そんなことはどうでもよかった。秋田県に入り夕暮れになった。列車から見る田園風景が夕焼けのなかにあった。音信不通になっていた大好きな人に久し振りに会う,「会えたら死んでもいい」そんな高ぶりのなかで,上の句が生まれた。
夕焼けには,こころを揺さぶられる。赤鉄橋から見る四万十川の上流の山々の夕焼けに,涙が出てくるときがある。運転する妻に助手席のぼくが,「見て見て,すごい。きれいやねえ」と言う。2つのことを同時にできない不器用な妻は,首を真っ直ぐ前に向けたまま悔しがる。赤鉄橋の真ん中あたりの歩道で,立ち止まってしばらく夕焼けを見ている勤め帰りの人もいる。
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