特別寄稿
いのちも自然のなかのもの―介護保険導入前の在宅医療の現場から
小笠原 望
1
1大野内科医院
pp.1014-1019
発行日 1999年11月30日
Published Date 1999/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902168
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はじめに
いよいよ介護保険の認定作業が始まった.ぼくは無床診療所で働く医師なのだが,患者さんたちを見ていると,介護保険について意外に冷静というか無関心である.「なるようになる,なるようにしかならない」の心構えは,ここ高知県の,台風による水害をくり返しくぐり抜けてきて身についた知恵なのかもしれない.「これで,老後は安心だ」とのお年寄りの声を全く聞かない.
診療所を訪れる一人暮らし,二人ぼっちの人たちは介護保険のことは口にしない.療養型病床群の数が全国一を誇る高知県なので,患者さんの沈黙とは反対に,医療の側の人間のとまどいの声をたくさん耳にする.
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