特別記事
規制緩和で医療―看護はどう変わっていくのか
川渕 孝一
1
1東京医科歯科大学大学院
pp.694-698
発行日 2001年9月10日
Published Date 2001/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686902338
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はじめに
これまで規制で守られてきた業界が,現在厳しい競争原理にさらされている。おもしろいことに,日本という国は内部改革することはなかなか難しいが,外国からの圧力がかかるとびっくりするほど国の制度が変わるのがたやすい。事実,日本政府は思い切った規制緩和策を断行して,わが国の産業界,特に規制に守られてきた業界をグローバル・スタンダードに近づけようとしている。医療界もその例外ではない。1995年3月に政府が打ち出した規制緩和推進計画の中には,「医療・福祉分野」に関する項目が含まれていた。これまで医療界や福祉界は「聖域」と言われてきたが,その領域にも規制緩和を通じた競争原理が導入されようとしているわけである。
しかし,何でもかんでも規制緩和すればよいというわけではない。場合によっては,むしろ規則強化すべき項目も存在する。95年1月に発足した行政改革推進本部規制緩和委員会(現在の総合規制改革会議の前身)が99年4月6日に規制改革委員会と改称したのもそのためである。いわゆる社会的規制は,むしろ強化する一方で,経済的な規制のみ緩和しようというのである。ここで言う社会的な規制とは,社会的秩序を保つために必要とされる規制のことである。福祉や医療の対象は人の命であり,福祉・医療サービスは人間の基本的要求を満たすサービスなので,社会的な規制は多い。
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