伝えたい話
病院から地域へのケアの広がり―"ながの子どもを虐待から守る会"の活動
鷲沢 一彦
1
1長野赤十字病院・小児科
pp.62-65
発行日 2002年1月10日
Published Date 2002/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686902108
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はじめに
―傷だらけになって帰ってきた子
10年程前,あるお子さんが親からの身体的虐待により重度の外傷を受けて担ぎこまれ,当院で治療に当たりました。それが,私たちが「子どもへの虐待」を意識した初めてのケースだと思います。教科書などで見聞きしたことはあったものの,何となく外国や都会で起きる出来事のような気がしていましたので,目の前の出来事が信じられず,当惑しました。とにかく入院として,できる限りの治療に当たりましたが,虐待を否定する親にどう対応していいのか?警察に連絡するべきなのかどうか?この後,この子どもをどうしたらよいのか?等,通常の医療とは異なる問題が多く,わからないことだらけでした。
この時初めて,児童虐待を担当するのは児童相談所であることを知り,連絡を取って対応していただきました。当初,このような子どもへの虐待など滅多にあるものではないと思っていましたが,残念ながら,その後も子どもへの虐待のケースが続きました。特に,それまで診療してきたお子さんが,虐待されて傷だらけになって病院に帰ってきたケースには,スタッフ一同衝撃を隠せませんでした。また,親も自分の養育が不適切であることを認め,児童相談所にも通告し,経過観察していたにもかかわらず,さらに重い外傷を負わされてしまったケースがあり,これまでの自分たちの対応が不十分であったことを痛感しました。
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