連載 私のすすめる本・15
言葉
小笠原 望
pp.216-217
発行日 2003年3月25日
Published Date 2003/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903376
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日本最後の清流と呼ばれる四万十川のほとりに,ぼくの無床診療所がある.下流に架かる赤い鉄橋(地元の人は赤鉄橋と呼ぶ)を中村の町から渡りきったところで,毎日の診療をしている.ぼくの部屋からは赤鉄橋はもちろん,蛇行する大河が上流まで見渡せる.
地方都市での20年間の病院勤務(内科医)のあと,田舎の診療所で6年が経った.かかりつけ医としてのぼくの変化は,患者さんのいのちをより近くに感じるようになったことだ.何年臨床の場にいても,「臨床はなんでもあり」「こんなことは初めてだ」と,生のいのちとのやりとりの場面がますます多くなった.それに何よりも,日々ライブ感覚のなかで言葉の大切さを今までよりも強く感じるようになった.
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