特集 "交渉"について考える
合意を得る交渉の原理
穀山 聡子
1
1筑波大学附属病院
pp.95-99
発行日 1992年3月15日
Published Date 1992/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901874
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看護婦と交渉
交渉能力は全ての看護婦に必要である.これは看護に必要なものを手に入れていく力である.人はみな自分の価値観,欲求,感情などをもち,自分に影響する意思決定に参画したいと思っている.全ての人のニーズが一致することはない.交渉とは基本的に互いに公正な基準をもとに,自分の欲しているものを得るために行なわれる.
たとえば患者や家族は自ら医療上の意思決定に加わりたいと思うだろう.専門家が素人よりよい決定ができるのでまかせるようにという態度では,彼らの欲求は満たされない.Artinianは重症病棟の看護婦と家族の交渉の必要性とその具体例を報告している1).家族は患者についての情報,精神的サポートが欲しいと思うが得られない.看護婦は時間的制約があり(時間が欲しい).ここで交渉が必要となる.家族と看護婦は互いの権力や地位によってでなく,相互のニーズを満たすための交渉をした.家族に病院のケアシステムを知らせ,計画的に情報を交換するシステムをつくることができた.家族は必要な情報とサポートを得,看護婦も患者と家族のための時間の有効利用という両者の欲求が満たされた.
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