特別記事
ヒューマンファクター工学からみた医療システムの安全性―他産業と医療のシステムの比較
河野 龍太郎
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1東京電力株式会社技術開発研究所ヒューマンファクターグループ
pp.946-952
発行日 2002年12月10日
Published Date 2002/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901562
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はじめに
横浜市立大学附属病院での患者取り違え手術事故(1999年1月11日発生)は,これまで病院を信頼していた多くの人々を驚かせ,この事故をきっかけとして,医療の安金について高い関心が寄せられるようになった。事故が発生すると,事故調査が行なわれ,いろいろな要因が指摘される。これまでに,航空や原子力発電の分野では,事故におけるヒューマンファクターの重要性が広く認識され,研究やさまざまなエラー防止の活動が行なわれている。このヒューマンファクターの問題は,現代の高い安全性を要求されるシステムの運用において避けては通れない重要なテーマである。したがって,航空・原子力分野で研究の進められてきたヒューマンファクター工学の知見は,医療システムにおいても十分適用可能であると考える。
本稿では,医療システムの特徴を他の産業と比較し,医療システムをさらに安全なものとするためには,今後どのようなことに取り組むべきか,筆者の考えるところを述べる。ただし,医療システムの実状を十分に理解していないために,その実効について十分に考察をしていないことをあらかじめお断りしておく。
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