連載 続・白衣のポケット・7
ありがたい
志水 夕里
pp.550
発行日 2001年7月10日
Published Date 2001/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901457
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ナースをしていたら,不規則勤務で夜勤をするのは当たり前。家庭ももっていないのだから,さらに当然。そんなことは,よく承知しているし,それが不満で仕事を変えようとも思わない。平日の休みがあるおかげで,公的機関や銀行の用事も足しやすい。だが,ときどき,「一般企業の人と同じように休みたい」と思うことがある。長年,「夜を家で過ごせない」「眠れない」「人が休みのときに働く」全スタッフが同じときに同じようには休みを取れないということは,やはりいろいろな面で不自由さがある。勤務表を見ながら,「正月に連休とれていいな」とか,「○○さんは夏休み○日とった」などと,どうしても生じてしまう勤務の差に,おぼろげな不満を覚えるのは自分が疲れているときなのだが。
「別にナースばかりが不規則勤務なわけじゃない」。不満に思ったらこう考える。ホテルマンも,アミューズメントパークの従業員も,休日は働く。飲食店で腕を奮う人々は,ほとんどが10時間以上の肉体労働だ。道路工事は深夜に行なわれ,長距離トラックは走り続ける。雪の降る夜,耳をすましていると,線路凍結防止のために終夜電車を走らせているのが聞こえる。農家も酪農家も動物園も,命を育て守る仕事に1日の完全休日は無い。いろいろな人がいろいろな仕事をしている。楽な仕事なんて,たぶん無い。誰もが,自分以外の誰かのために,努力してエネルギーを費やし,自分の生活の糧を得る,それが仕事だ。
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