連載 続・白衣のポケット・13
「初めて」という心細さ
志水 夕里
pp.74
発行日 2002年1月10日
Published Date 2002/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686902111
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休日勤務はスタッフが少ない。病院が休みでも,ICUの患者の数や緊急性に関係はない。暇なこともあるが,キリキリ舞いの時もある。お盆,正月,GWに連休をもらえるのはうれしいが,忙しい休日勤務に当たると最悪。だから,GWをはずれた頃に,希望していないのにもらえた4連休も「ありがとう,婦長さん!」と素直には喜べなかった。大体,4,5月はいつも忙しい。新生活のストレスか,脳血管障害を起こす若い人が多い。子どもの手術は,学校が休みの時期をねらって行なわれる。そして,今年は緊急入院も,病棟から急変で運び込まれる人も,何だか多かった。連休中の多忙さは予想できたので,消耗しきることを見越して,私は航空券の手配をしておいた。
海外逃亡。2,3泊なのでアジア。たまたまメールをくれた友達がいたので,タイ・チェンマイに決定。とにかく何にも縛られたくなかったので,ツアーにも入らず,宿も日本では手配せず,航空券だけを手にして日本を発つ。究極的に疲れると,私は飛行機に乗りたくなる。食べて飲んで眠るだけ。半強制的に動けず,時間が経つと異空間に着いている楽しさ。何でも乗務員任せの安楽さ。日頃の逆をしたいだけなのかもしれないが,言葉が分からなければ,世間話に苛立つこともない。
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