特集 手術室から見える看護の専門性と認定制度へのつながり
日本手術看護学会の活動から
宮原 多枝子
1,2
,
割石 富美子
1,3
1日本手術看護学会
2東京女子医科大学病院看護部
3大分医科大学附属病院
pp.260-265
発行日 2001年4月10日
Published Date 2001/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901396
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
手術看護の質の向上をめざして
はじめに
周手術期とは,患者が外科手術療法の適応と診断され,病棟での術前準備段階を経て術中および術後に至る期間をさす。患者や家族は,医師よりインフォームドコンセントを受け,短期間のうちに自己選択・決定をしなければならない。この決断のプロセスを支えるときから周手術期看護は始まっており,医療者の適切で温かなかかわりは回復過程によい影響をもたらす。
日本の看護が疾患中心から患者の生活の援助と精神的なかかわりを重視する患者中心の看護へと変遷する中でも,手術室は「外科医によって治療が行なわれる場」という認識が一般的であり,「手術室に看護はあるのか」と問われた時代もあった。しかし,手術を受ける患者は,最も手厚いケアを必要とする存在である。すなわち,手術患者は生命を第三者の医療者に委ね,自己を表出する意思伝達手段を奪われており,心身の危機的状況に置かれている。患者は手術がもっとも有効な治療法と認識し,科学の進歩・高度の技術を信頼してもなお,緊張の高まる非日常的な体験で,さまざまな不安を抱えているのである。手術療法は,患者に麻酔を施し,呼吸,循環,体温をコントロールし,躯血や体外循環など非生理的状況下で行なわれ,侵襲性の高い治療法である。また,なんらかの形態・機能の変化を伴うものであり,場合によっては永久に自己の形態・機能の一部を喪失することもある。
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.