連載 かれんと
教室の中の他者になってみる
中山 一樹
1
1鹿児島県立短期大学
pp.555
発行日 1997年8月10日
Published Date 1997/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900677
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夏の気配とともに教育実習は始まる.学生を受け入れる学校側の多忙は察するにあまりあるが,教育実習生を送り出すほうも気が気ではない.日頃学内での「自由」で緩慢な思考に慣れた学生たちは,実践現場で仕事の当事者性を試され立ち往生する.こちらは何かあればすぐ出勤と身構え,事前指導が役だつだろうかなどと考えながら待機する.事前指導のポイントは模擬授業だ.
模擬授業というと,上手に授業を進めるためのレッスンだと学生は勘違いをしている.こちらのねらいは,教師や生徒たちの身になること,それ自体にある.教室空間の時間の流れ方を自分たちで仮につくり出してみる試みなのだ.教師役は黒板を背にして自分の声でものを言うことから始める.自分を注視する数多くの人間たちを向こうにまわして言葉を発するのは大変だ.足がガクガクしているのがわかる.そんな時,私は教師役の側に立つようにしている.
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