連載 かれんと
車中の憂鬱
古茂田 宏
1
1一橋大学社会学部
pp.367
発行日 1996年6月10日
Published Date 1996/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900494
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最近,どうにも我慢できないことがあれこれと起こる.いちいち数えていくとキリがないし,なんだか自分が時代遅れの老人になった気がして憂鬱なのだが,1つだけあげると,あの携帯電話である.
もちろん,たとえば看護婦が急患に備えて職業上持たざるを得ないというような事情もあるだろうから──それはそれで気の毒な話であるが──その存在自体が有罪だと一概には言えない.しかし,とにかく満員電車などの中で,「モシモーシ」だの「ちょっと聞こえにくいんだよなー,もっと大声でしゃべってよ」などとやられると,みるみる血圧が5ポイントほど上がってしまうのである.カシャカシャカシャカシャ……とうるさいヘッドホンオーディオにも腹が立つし,思い切り両足を広げて狸寝入りをしているシルバーシートの若い男にも腹が立つという次第で,電車の中は血圧上昇の要因でいっぱいなのだが,ほかはさておいても,携帯電話は不快である.
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