特集 こうして変えたベッドサイドの環境
病棟の音環境はこうして変えられる—ベースとなるデータと改善案
服部 俊子
1
1淀川キリスト教病院看護部
pp.520-529
発行日 1999年6月1日
Published Date 1999/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905853
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「音の創造と同じくらい音の防止に関心を」
世間ではBGMブームで,駅のホームや図書館までがBGMを流していた時期があった.「音楽が患者の時間感覚遮断に効果をもたらし,音環境もよくなれば」とBGMを流し,患者に意識調査をしたことがある.しかし,多くの音が存在する上にBGMを流すという行為に対する結果はばらばらで,考察できるようなものではなかった.また,R.マリーシェーファーらは「現代人は音を鎮痛剤としてまたいろいろ気を散らすものを,小奇麗な包囲物をつくりだすよう無毒で無害なオーケストレーションをほどこし不快で気を散らすものをマスキングするようにデザインする.…(中略)…音楽のたれ流す汚物や汚水,公共の場所で放送される音楽に対する抗議が認められる.新しいサウンドスケープにおいていまや音の創造と同じくらいに音の防止に関心を持たなければならない」(R,マリーシェーファー『世界の調律』平凡社,p153, 1986)と指摘している.
こうしたことから,音環境を考えるには音の専門知識と専門家の協力が必要と考えた.そして,私の意思に賛同してくれた3人専門家とともに,病棟音環境の研究をはじめて7年になる.本稿ではその成果である病棟に存在する音についてのデータを示すとともに,まずとりかかれる改善策を具体的に紹介したい.
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