連載 「看護」の意味を見つめる 訪問看護の実践から・8
男性から託された願いと約束—「いつか僕のことを多くの人に伝えてほしい」
藤田 愛
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1医療法人社団慈恵会 北須磨訪問看護・リハビリセンター
pp.1128-1131
発行日 2019年12月10日
Published Date 2019/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686201462
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夫婦との出会い—許可されぬ「帰りたい」
その男性は70代で妻と2人暮らし。3人の子どもたちは親元を離れ,それぞれの家庭を持っている。男性は肺がん,多発性脳転移を患い,入院することになった。オピオイドの内服が始まり,痛みは緩和した。ベッドだけの生活で,少しずつ足腰は弱り始めていた。食欲がなく,夜間になるとせん妄を起こすようになっていた。
妻から直接,私の事務所に電話があった。毎日面会に行くたび,本人が帰りたいと言い続けていて,私も本人の望み通りにしてやりたいと思うのだが,主治医に退院が許可されない。何か所も巡って相談したが,どこでも主治医の退院許可を得てくださいと返事をされ,行きついた先がここだった。
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