世界の波
暗い冬 寒い冬
末松 滿
pp.30-32
発行日 1952年1月10日
Published Date 1952/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200216
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氣象臺の話によると,今年の冬は寒いという。お天氣の豫報はあまりあてにはならないけれど,「今年の冬は暗い」ことだけは確かである。電力が足りなくて停電がくりかえされるからだ。電力萬端をつかさどる公益委員會の發表によると,12月に供給できる電力は22億5000萬キロワツト時しかないが,需要は26億7000萬キロワツト時はあるので,この1カ月だけでも4億2000萬キロワット時の不足である。なぜそんなに足りないのかといえば,答は必ず「雨が降らなかつたから」と決つている。なるほど1951年は秋の景物たる颱風が少く,たつた1フルース孃が九州地方に雨のおみやげを持つてきただけだつた。そのため平年にくらべて發電用の水力は3割減,水の多かつた去年にくらべると半分くらいという減りかただ。水力が少なければ火力でおぎなえというだろうが,火力發電のために使う石炭までが,今年は特に心細い。掘りかたが少かつたというよりは,5月に誕生した9つの電力會社が重役の椅子や社内の繩ばり爭いに浮身をやつし,買つておくべき石炭のことを忘れていたからだ。そのため火力發電の方も,平年にくらべて半分という始末,まつたく弱りめに崇りめだ。
そこで公益委員會が采配をふり,電力使用の制限が行われた。家庭の電燈は朝7時から夕方4時半まで消す。電熱器は夕方4時半から8時半まで使うべからず,一般工場の電力は12月は4割減,來年1月は半減する……といつた次第だ。
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