連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・100
子どもが人生への一歩を刻むとき
柳田 邦男
pp.910-911
発行日 2014年9月10日
Published Date 2014/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686103198
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中学1年生の時だった。学校は,栃木県の小さな町の中心部にあった。2学期になって,クラスに転校生が入ってきた。Tという名の男の子で東京から越してきたという。
昼食のとき,みんなそれぞれに持参の弁当を開くと,Y君がT君の弁当を見て,「その黄色いのなんだい?」と言う声が聞こえた。周りの者たちものぞきこんだ。「マヨネーズだよ。知らないの?」T君はそう言った。私にとっても「マヨネーズ」という言葉自体がはじめてだった。戦後の食糧難の時代だった。
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