連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・95
自己否定が自己肯定に変わる瞬間
柳田 邦男
pp.408-409
発行日 2014年4月10日
Published Date 2014/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686103063
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「絵本は心を育てる特効薬」とか「絵本と子どもの心の成長」といったテーマで講演をした後,私が翻訳した絵本のサイン会をすると,多くの親たちが「子どもの名前をサインしていただけますか」と言う。もちろん私は喜んでお子さんの名前をメモ用紙に書いていただいて,サインする。お子さんが3人もいる母親も少なくない。少子化が進むなかにあって,3人の子たちを育てながら,講演会を聴きに来て,絵本の読み聞かせにも熱心に取り組んでいる親もいるんだと知ると,私は精一杯,その子たちへのメッセージを書きこんでしまう。
そんなとき,よく思うのは,最近の子どもの名前が昔には想像もできなかったほど多彩になっていることだ。昔は女の子は大半が「芳子」とか「恵子」とか,子をつけた名前が多く,子をつけない場合でも,「薫」とか「真由美」などと,よく見かけるものが大半を占めていた。しかし,最近は,「里彩」「萌瑛」「菜夢」「遥華」「梓紗」「明香里」「菜摘」など,数え上げたらきりがないほど多彩で個性的になっている。親たちがわが子に託す思いがにじみ出ていると言おうか。サインしていると,いろいろ想像をかき立てられて面白い。
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