連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・94
危機から生まれるいのちを繋ぐ言葉
柳田 邦男
pp.302-303
発行日 2014年3月10日
Published Date 2014/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686103036
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人は大きな喪失感に打ちひしがれ,暗闇のどん底に落ちこんだとき,何をきっかけにして再び前向きの気持ちを取り戻せるのか。
ずいぶん前のことになるが,私の姉が伴侶を食道がんで亡くして悲しみに沈んでいたとき,1冊の本を読んで,とても心が癒されたという。その本は,愛妻を亡くしてうつ病になっていた元気象庁予報官の倉嶋厚さんが立ち直るまでの経験を書いた『やまない雨はない』という題の手記だった。一人の初老の男性の人生記として多くの人々に共感を呼んだ本だが,何といってもタイトルの「やまない雨はない」という言葉が読者の心に「そうなんだよなあ」という納得感をもたらしたのだった。
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