増刊号特集2 医療機関において警察OBが果たす役割
互いに手を取り合いながら職員の安全を守るために
スペシャリストとしての警察OB―多様な困難に病院全体で取り組むために
佐藤 太郎
1
1聖路加国際病院
pp.673-688
発行日 2012年7月20日
Published Date 2012/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686102511
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医療機関に勤務する警察OBの基本姿勢
患者さんに安心な医療環境を提供し,職員も安心して働くことができる環境を整えることは,質の高い医療サービスを提供するうえで,重要な要素です。医療は医療者と家族などを含めた患者さんとの信頼関係で成り立つ共同作業でもあります。しかし,さまざまな要因が絡み合い,関係が崩れてしまい,クレーム,暴言・暴力といった事案が発生します。それを防ぐために,安全な管理体制を整備,確立して防止策を考えることが,医療機関に勤める職員,患者さんなどの安全・安心を守るための喫緊の課題となっています。
従来,医療機関(病院)では,院内で犯罪が起きることを想定しておらず,職員が暴力を振るわれても「患者の病態によるもの」などの理由から,「暴力」として捉えない風潮があったことが指摘されています。しかし,暴力に関する実態調査の結果から,多くの病院職員が暴力被害にあっていることが明らかとなり,問題となる事案はさまざまな形で発生し,その対応も千差万別となっていることも明らかになりました1)。これらの現状から各医療機関は,さまざまな安全対策を講じながら現在至っていますが,人員の増加,施設の整備に伴うコストが増すなかで,警察OBの存在も注目されるようになりました。それぞれの医療機関に勤務する警察OBが行なうべき仕事,その指針を一様に示すことはできませんが,暴力などの犯罪は絶対に容認しないという強い姿勢を明確にして,仕事に取り組むことが基本だと考えています。
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