連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・72
大変な時代の子どもの心
柳田 邦男
pp.68-69
発行日 2012年1月10日
Published Date 2012/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686102324
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今は大変な時代だ。経済的危機,格差社会,地方のまち・むらの崩壊,貧困層拡大,高い失業率,行き詰まる高齢者医療・福祉,等々,社会全体が直面している問題が,この国に吹き荒れている。と同時に,日常の生活の場においても,DV,子どもに対する虐待・ネグレクト,介護疲れ,家庭崩壊,学校におけるいじめ,親の自己中心主義の傾向,等々,子どもにとって受難の時代というべき状況になっている。
そんななかで東日本大震災が発生した。東北から関東にかけての広範な地域において,津波や原発事故による放射能汚染の被害を受けた人々は,生活と人生の基盤となる家,土地(農地・山林も含む),まちを失い,仕事も失ったなかで,これからの生活をどうするか,目途も立たないまま避難を強いられ,暗澹とした日々を過ごしている。子どもたちにとって,それはあまりにも苛酷な環境だ。心のケアを必要とする子どもたちが少なくない。
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