Editorial
大変な時代が来ている!
木村 琢磨
1
1国立病院機構東埼玉病院総合診療科
pp.867
発行日 2012年12月15日
Published Date 2012/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102673
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同僚の医師によれば,私には実に多くの口癖があるようである.どうも,最近は「大変な時代が来ている!」という言葉をカンファレンスで連発しているらしい.われわれは,外来診療,病棟診療,訪問診療,特別養護老人ホームの嘱託医業務などに携わっているが,そのほとんどが高齢者であると言っても過言ではない.連日,新聞やテレビなどで,「超高齢社会」「多死社会」「孤独死」「認知症の増加」「老老介護」などの深刻な話題を多く見聞きするものの,それら以上に,自分たちの周りの高齢者に日々生ずる現実に驚かされることが多い.
たとえば,「外来で高齢患者の話が要領を得ないため,付き添いの息子を呼んだところ,“やはり認知症”であった」「訪問に行った認知症患者が妻に虐待されている」「97歳の方を肺炎で入院させようとしたら,“治療だか何だかわかりませんが年寄りを虐めないでください”と言われた」「92歳の方が大腸がん検診を希望され,結果が陽性になって主治医として悩んでいたが,なんと根治手術となった」「もともと虚弱な方の食が細くなり眠るようになったため,“お別れの時期が近い”と家族に説明したが,何の治療もせず,しだいに元気になった」「93歳の方に,事前指示の話題をもちかけると,“自分が死ぬことなど考えたこともないわ!”と一喝された」などである.どうも私は,このような症例に接した際に「大変な時代が来ている!」と言ってしまうようである.
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