連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・67
花や木と言葉を交わしていますか?
柳田 邦男
pp.830-831
発行日 2011年8月10日
Published Date 2011/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686102177
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5~6歳の子どもは,人間の感情の動きや人間関係の難しさなど,人が生きていくうえで大事なことについては,何もわかっていないと,大人は思いがちだ。おそらく大人がそう思うのは,子どもが自分の感情や思いを言葉でうまく表現することができないからだろう。大人だって,自分の気持ちを正確に他者に伝えるだけの表現力をもっている人は少ないのだから,子どもが上手に言葉で表現することができないからといって,《大事なことは何もわかってない》と言い切ってしまうのは,単なる思いこみに過ぎない。私はそう思う。
というのは,幼い子の感性や心の動きを示すさまざまなエピソードに出逢ってきたからだ。アメリカの絵本『オーパルひとりぼっち』は,まさに幼い少女が辛い境遇のなかで,何を感じ何を考えていたかを,本人が書き留めていた断片的なメモをもとにして構成したノンフィクションの絵本だ。
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