連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・10
木が与えてくれる美しさと無償の愛―『おおきな木』『木のうた』
柳田 邦男
1
1作家
pp.234-235
発行日 2006年3月10日
Published Date 2006/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100043
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木をモチーフ(題材)にした絵本は数え切れないほどある。木の緑や木蔭は,憩いや癒しをもたらしてくれるから,絵本のモチーフになりやすいのだろう。ここでは,木をモチーフにしたユニークな持ち味の絵本を2冊紹介してみたい。2冊とも,絵本としては小さめの判型で,表紙を覆う清々しい緑色のトーンがとても似ている。シェル・シルヴァスタイン作の『おおきな木』とイエラ・マリ作の『木のうた』だ。
放浪生活を好むアメリカの詩人でミュージシャンで漫画家で絵本作家でもあるシルヴァスタインは,イラスト風の無彩色の簡潔なペン画の絵本で人生哲学を表現してしまう特異な才能をもっている。若き日に誰しもが悩む自分探しの心の旅を描いた『ぼくを探しに』(講談社)は,若い女性層に愛読者が少なくない。『おおきな木』は,『ぼくを探しに』よりも先の,シルヴァスタインの絵本ジャンルにおけるデビュー作となった作品で,原著は1964年の出版だ(邦訳は1976年)。
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