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はじめに
─指摘される教育の継続性の欠如
看護師の教育のあり方に関する議論は,厚生労働省,基礎教育,卒後教育双方に携わる関係者において多くの時間がかけられています(図1)。良質な看護を社会に提供するために,さまざまな創意工夫をもって看護師を育成するわけですが,その効果にはまだ十分な満足が得られていません。看護教育は看護管理の大きな要素であり,病院管理の要素でもあります。病院の機能を維持する人材として,離職を防止し,実践力の向上を支援し,そして医療の質の保証を期待するものです。ゆえに看護教育は,医療の質を支える要素であるといえるでしょう。
看護教育においては,看護基礎教育を修めたあとに臨床デビューとともにくる大きなギャップ,リアリティショックに象徴されるように,継続性の欠如が指摘されています。新人看護職員における臨床研修の努力義務化に伴いまとめられた『新人看護職員研修ガイドライン』において,卒後教育で習得するべき知識・技術の指針が出されましたが,卒後教育に携わる立場からは,二者間のギャップの解消には言及されておらず,そのギャップを数年に分けて吸収するような印象をもっています。
二者間の根本的な溝を埋め,基礎教育から卒後教育まで継続して続けられる教育のあり方を構築していく必要があると思われます。看護教育の目標が,基礎教育,卒後教育ともに,社会に良質な看護を提供できる看護師の育成であるとするならば,基礎教育3~4年間のあとに4年目あるいは5年目として新人看護師教育が位置づけられるべきではないでしょうか。
そこで,日本医療教授システム学会注)(以下,JSISH)は,基礎教育の教育者と卒後教育の教育者が学習方法のシームレス化に向けた取り組み方の可能性をともに考え,意見を交換する機会をもつために,2010(平成22)年11月,2011(平成23)年3月の2回にわたって,ラウンドテーブルディスカッションをもち,根本的な課題を議論しました。本稿では,その場でディスカッションされた内容を振り返り,当院やJSISHにおける今後の構想について報告します。
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