書評
シリーズ ケアをひらく『リハビリの夜』
河村 圭子
1
1梅花女子大学看護学部看護学科
pp.67
発行日 2011年1月10日
Published Date 2011/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101942
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
衰えの悲しみから,つながっていく官能へ
生きる切実さが迫るリハビリ体験
本書は,脳性まひの当事者で小児科医でもある著者が,自らのリハビリ体験を主軸に,幼少期から現在に至るまでの軌跡を綴ったものである。
脳性まひによる運動機能の障害は千差万別である。著者の場合は「随意的な運動をつかさどる部分がダメージ」を受けたことによって,「脳には損傷があるが筋肉や骨には問題がない。つまり,乗り物には異常がないが,それを操縦する認知や行動といった過程に問題がある。だから,注意の向け方,イメージの描き方,努力の仕方などに介入しなくてはならない」といった実践的解釈がなされてきた。そこから,目に見える体の問題だったらあきらめるしかないが,努力や気のもちようといった心の問題だというなら希望がもてるといった解釈が派生し,リハビリの目標は高められ,うまく動けない原因は家族や本人の意志や努力の問題であるとされた。著者にとって,このような現実にそぐわない,希望的観測に支えられただけのリハビリが負担であったことは想像に難くない。実際,本書で描かれた脳性まひとリハビリの体験は,淡々とした語り口とは裏腹に生きている切実さが迫ってくる。
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.