人とことば
人命尊重について思うこと
三浦 運一
pp.197
発行日 1970年4月15日
Published Date 1970/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204050
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人間尊重とか人命尊重という言葉は,戦時中のはなはだしい人命軽視に対し,新憲法の根本精神としてよくいわれる言葉であって,公衆衛生の基本的理念もまさにそこにある.しかしこの言葉が,近来しばしばわれわれの耳目に触れるのは,それだけ人間や人命が尊重されない事実の多いことを物語っているものと思う.
すなわち現在,水質汚濁,大気汚染その他の公害を始め,種々の薬品禍,食品有害添加物の問題等々,企業と商業主義の激しい利潤追求のために人間の健康や生命が軽視されている事実が相次いでいる.不慮の災害もまたしかりで,ことに自動車による事故死は,年々増加して1年18,000人と結核死亡を凌駕する勢いであり,特に15〜30歳の青壮年期では全死因中の第1位,5〜14歳の児童期には溺死に次いで第2位を占めている.
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