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医療安全におけるコンピテンシーとは?
医療安全を推進するために獲得すべきコンピテンシーについては,オーストラリアにおける検討があり,The Australian Council for Patient Safety and Quality in Health Careが2005(平成17)年にNational Patient Safety Education Framework1)として著している。その内容としては,1)円滑なコミュニケーション,2)エラー・マネジメント,3)EBMとITの適正利用,4)安全業務励行,5)医療倫理順守,6)継続学習,7)その他の課題,の7項目が示されている(図1)。7)の「その他の課題」としては,患者・部位誤認や不適切な手技の防止,および安全な薬剤の処方など,具体的な項目が挙げられている2)。
これらは,医療安全推進のために医療に関わる者が獲得すべき課題とされており,その到達すべきレベルが職種や職位に応じて,レベル1(ボランティア,事務職員など),レベル2(新人看護師,研修医など),レベル3(主任看護師,上級医,部門長など),レベル4(実務上の管理者,院長など)の4段階で示されている(図2)。上位レベルの者は下位レベルのコンピテンシーを習得していることが前提で,レベル毎に各コンピテンシーのサブカテゴリーに対して習得すべき課題の具体的な内容についても明確にしている。これによると,医学生や看護学生はレベル1と考えられ,医療安全を推進するために獲得すべき課題としては,学生から医療機関のトップマネジメントまで同じ内容が求められており,到達レベルが異なるということである。これは,教育・研修を実施する立場からみると,同じ内容で相手のレベルに合わせて提供する研修内容の比重を変える必要があるということでもある。医療安全を推進するために,医療に関わる者が職種や職位のレベルに応じて到達目標を策定し,その達成度を評価できるように具体的に表現されているものが,これらのコンピテンシーである。
本稿では,この7項目のコンピテンシーのなかでも,特に7)の「その他の課題」として具体的に挙げられている患者・部位誤認,および安全な薬剤の処方に関連する“誤薬”に焦点をあてて,その防止対策の現状と国際的に提唱されている新たな取り組みを踏まえて,今後の展望について述べる。
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