連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・41
あたたかい場所,つながる心―『だんろのまえで』『あたたかい木』
柳田 邦男
pp.1136-1137
発行日 2008年12月10日
Published Date 2008/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101385
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北風と太陽が,マントを着た男にどちらがマントを脱がせることができるかを競う,よく知られたイソップの寓話がある。北風は身も切れるような冷たい強風を襲いかからせて,男からマントをはぎ取ろうとする。しかし風を強くすればするほど,男は手でマントを固く握りしめて脱がさせない。これに対し太陽は,ポカポカと暖かい日射しを送る。青空の下,男は温かくなってきたのでマントを脱ぐ。太陽が勝ったのだが,これは単なる勝ち負けの話ではない。
「心を閉ざす」「心を開く」という,心の動きや状態を表現する言葉があるが,北風と太陽の寓話は,人の心を閉ざすものと開かせるものは,それぞれどういうものなのかについて,極めて本質的なことを比喩的に語っているのだ。
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