連載 医療コンフリクト・マネジメント 医療メディエーションの実践・10
正確な情報共有はどこまで可能か
中西 淑美
1
1大阪大学コミュニケーションデザイン・センター
pp.66-71
発行日 2008年1月10日
Published Date 2008/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101121
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リスク情報の共有とそれぞれの自己責任
近年,企業倫理や社会的責任といったことが厳しく問われるようになっているにもかかわらず,食品の消費期限偽装といった企業不祥事の報道は後を絶たない。一般の人々には安心・安全が脅かされる時代になったと感じられ,各専門家はよりいっそう完璧な安心・安全を要請される。とりわけ医療の現場では,患者・家族のみならず,地域住民や社会における「医療の安全性」に対する期待や安心への最善たる希求がある。社会も個人も,医療従事者がその期待に応えるよう,最大限の努力を講じることを求めているのである。
さて,人はどうすれば安心するのかということを考えてみると,その答えは簡単なようで難しい。信頼を構築するために,行政的に一番コストのかからない方法は,正しい情報を伝えることであろう。特に,非専門家である一般の人々にとっては,専門家から情報を獲得することは,安心につながる。人が安心するためには「信頼」が鍵であり,その個人が感受する「正しさ」についての意思決定を供与する。
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