連載 法と医療のはざまで[6]
乳幼児のうつ伏せ寝とSIDSの鑑定
飯田 英男
1
1関東学院大学法学部
pp.500-501
発行日 2004年6月10日
Published Date 2004/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100499
- 販売していません
- 文献概要
看護師兼助産師の被告人が,生後3日目の新生児をうつ伏せ寝にさせたまま,その場を離れていたため,同児に対して鼻口部圧迫・閉塞に起因する低酸素脳症の傷害を負わせ,約8か月後に死亡させた事件について,罰金40万円(検察官の求刑は禁固8月)に処するとの判決があった(東京地裁平成15年4月18日)。本件については,民事裁判でも被告の病院側が激しく争っており,すでに1,2審で原告勝訴の判決が出ているが,現在,最高裁に上告中である。
医療過誤事件については,医療側の刑事責任および民事責任を問われることがあるが,両裁判が並行して行なわれる事例は稀であり,筆者の調査では,これまで本件を含めて4件だけである。民事裁判は,患者やその遺族が原告となって自由に訴訟を提起できるのに対し,刑事裁判の場合は,行為者の過失が重大で,かつ,被害の程度が大きいことなどから,検察官が国家刑罰権を行使して行為者を処罰する必要があると判断した場合にのみ,起訴がなされている。したがって,刑事事件として起訴される事件は,民事事件に比べると極めて少なく,しかも過失が明白で,医療側が争う余地のあまりないような事件がほとんどである。その上,被害者側との示談ができれば,刑事事件においても情状として考慮される場合が多いことから,民事裁判でも争われることは少ないのが通例である。
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.