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はじめに
情報があふれる昨今,医療の受け手にも「患者中心の医療」という概念が浸透してきており,医療者側も「医療はサービス業である」という姿勢で患者に接しています。しかし,一方で「患者の権利」を履き違え,わがままや横暴な主張がなされる場合の対応に困惑することもしばしば経験しますし,暴言や暴力など見過ごすことのできない場面に直面し,葛藤することも多々あります。
近年,社会環境の変化や個人のモラル・価値観の変化とともに,世間一般に暴力事件は増加傾向にあります。医療現場においても同様であり,特殊な例とはいえ,病院内での発砲事件や刺殺事件は記憶に新しいところです。精神科や救急医療の現場では,以前から暴力が問題となっていましたが,最近では一般病棟においても暴力やセクシャルハラスメント(以下,セクハラ)は頻発している問題だと指摘する報告もあります1)。
一口に患者からの暴力と言っても,疾患や病態がもたらす避けようのない暴力と,ストレスや怒りの矛先として医療者に向けられる暴力など,いろいろあります。後者のような理不尽な暴力についても,現場の看護師は「患者だから」と何も言えずに,ただ我慢している場合が多いのではないのでしょうか。もちろん,看護師として,患者を拒否したりケアを拒否することは,職業倫理上許されることではありません。しかし,一人の人間として許すことのできない暴力が,医療現場にはたくさん潜んでいることを実感しています。
患者からの理不尽な暴力を我慢することも看護のうちなのでしょうか。ここでは,看護師が置かれている環境と,業務上経験している理不尽な暴力に焦点を当て,解決に向けた方策を提言してみたいと思います。
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