連載 法と医療のはざまで[3]
看護師による静脈注射の50年
飯田 英男
1
1関東学院大学法学部
pp.246-247
発行日 2004年3月10日
Published Date 2004/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100461
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厚生労働省は,平成14年9月30日医政局長通知により,「看護師等が行う静脈注射は,保助看法5条に規定する診療の補助行為の範疇として取り扱うものとする」とし,これまで,「静脈注射は,薬剤の血管注入による身体に及ぼす影響の甚大なること及び技術的に困難であること等の理由により,医師または歯科医師が自ら行うべきもので法5条に規定する看護婦の業務の範囲の範疇を超えるものであると解する。従って,静脈注射は法37条の適用の範囲外の事項である」としていた,昭和26年9月15日医収517号医務局長通知を廃止した。
よく知られていることと思うが,昭和26年の医務局長通知は,国立鯖江病院で起きた看護師らによる静脈注射の誤薬事故についての刑事処分にあたり,福井地検からの照会に回答したものである。この回答のなかで,「従来斯かかる法の解釈が一般に徹底せず又医師数の不足等の理由により,大部分の病院等においては医師又は歯科医師の指示により看護婦が静脈注射を行っていたのが実情であり,今直ちに全般的に法の解釈通りの実行を期待することは困難な事情もあるので,当局としては今後漸次改善するよう指導する方針であるから,貴庁においても事案の処理にあたっては十分これらの事情を斟酌願いたい」としており,本来であれば,看護師の行なう静脈注射は違法であるが,直ちに法の解釈通りに行なうことは困難な実情にあり,今後,改善指導するので当面は大目に見てもらいたい,という趣旨であろうと思われる。
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