連載 事例と判例で考える病院の看護水準と事故防止・10
入浴中の事故
藤井 奈穂紀
1
1東京海上日動メディカルサービス(株)メディカルリスクマネジメント室
pp.862-866
発行日 2005年10月10日
Published Date 2005/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100249
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はじめに
入院患者の小学生女児が入浴中に溺死した今年4月の事件はまだ記憶に新しい。「溺死」以外にも,浴室とその周辺で発生する事故は「転倒・転落」「急変」「熱傷」など多岐にわたる1)。
厚生労働省の「医療安全対策ネットワーク事業 平成15年全般コード化情報集計結果(ヒヤリ・ハット事例収集)」においては,全事例51119件中,入浴中に浴室において発生した事故の事例は215件(約0.4%)であった2)。割合としては少ないものの,ひとたび発生すれば,その環境要因から死亡事故につながる危険性が高いことは周知の事実である。それは家庭内においても入浴中の事故が多く発生していることからもうかがえる。同じく厚生労働省「平成15年人口動態調査 家庭内における主な不慮の事故」の,種類別にみた年齢別死亡数においては,家庭内死亡数全11290件中,浴槽内での,または浴槽への転落による溺死および溺水が原因とされる死亡数は3002件(約26.6%)に上る3)。
医療機関を生活の場にしている入院患者は,何らかの基礎疾患や障害をもっていることがほとんどなので,医療従事者は入院中の患者が安全に入浴できるよう常に配慮しなければならない。入浴に伴う安全配慮義務が不十分であった事故の場合は,その管理方法の妥当性や責任を問われる場合もある。
今回は入院中の患者に対する入浴許可のあり方や,入浴方法,管理体制などについて参考となる事例を紹介し,事故発生防止に向けて,どのようなことが看護師に求められているのかを考える。
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