特集 進化する入浴ケア[2]在宅でのくふう
高齢者の入浴事故防止のために―入浴に関連した事故調査から
高橋 龍太郎
1,2
1東京都老人総合研究所
2介護・生活基盤研究グループリーダー
pp.808-812
発行日 2003年10月1日
Published Date 2003/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100793
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入浴事故はなぜ起こるか
増加する入浴中の高齢者の急死
人の死の多くは病気と結びついている。日本人の死亡原因の上位3つは,がん(悪性腫瘍),脳卒中(脳血管障害),心臓病(心疾患)が占めており,いずれも生活習慣や遺伝などに起因する病気である。高齢者について見ると,4番目に肺炎が続き,5番目に多い死因として,不慮の事故がある。
不慮の事故というと交通事故が多いように思われるが,高齢者の場合には,交通事故以外の窒息や転倒などもかなり含まれる。なかでも,家庭内での「溺死」の増加が目立っている。注意を要する点は,浴槽内で死亡していても,死亡診断で「溺死」と判定されるのは,顔が水没しているといった明らかに溺死が疑われる場合に限られることが多く,そうでなければ,入浴中に起こった心臓・脳疾患の発作(病名としては,脳血管疾患,心不全,心筋梗塞,不整脈)などと判定され,統計上「病死」に分類されるため,不慮の事故には含まれないことになる。それも考えると,高齢者の入浴中の急死はかなりの数に上るものと思われる。
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