特集 患者と医療者が満足できる療養環境を構築するために
療養環境に資する病院建築とは
中山 茂樹
1
1千葉大学工学部
pp.821-827
発行日 2005年10月10日
Published Date 2005/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100235
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建築の意味
欧米に比べ,わが国では「建築」に対する関心が大変に低い。六本木や汐留に新しいオフィスやホテルができても,あるいは国や自治体立の立派な美術館やコンサートホールが建設されたことを報道する新聞や雑誌の紹介記事を見ても,そこに建築家の名前を発見することは極めて稀である。これが欧米のニュースだと,設立者(市長さんやクライアント)名とともに建築家(設計者)の名前は必ず併記されている。
もともと「畳と何とかは新しいほうが良い」とされているのがわが国である。神道の中心である伊勢神宮では,20年ごとに全く同じお社を,用意してある2つの敷地に交互に建て替えるということを,1300年間も続けてきている。建築のもつ意味はきわめて薄く,その精神性の継承が重要であることを意味しているのであろう。言い換えれば,良い建築をつくってそれを長く使い続ける,という志向はわが国には存在しなかったのかもしれない。このような社会の中で建築を創造するのはなかなか厄介なことである。
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