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■はじめに:BCPの経緯と感染症対応
2011年に発生した東日本大震災を経て,BCPに関する論考は大量に発表されてきた.本誌でも2012年12月に「病院のBCP」が特集として組まれ,BCP策定はすっかり定着することとなった.また,厚生労働省(厚労省)は2017年3月に災害拠点病院におけるBCP策定を指定要件とした.これらBCPが対象とするのは自然災害,それも大地震に対応する事項が大半であり,病院自身の被災を最小とし,人的被害を病院がどう受け止めるか,すなわち突然に起こる医療供給能力の低下と大量な医療需要という課題へBCPにより対応することが重要な課題として捉えられていた.
ところで,内閣府が示した「事業継続ガイドライン-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応第3版(2013年8月改定)」では,BCPの対象として,大地震などの自然災害のほか,テロ,大事故,サプライチェーンの途絶などと並んで感染症の蔓延も挙げられている.この時点で,BCPには感染症対応の面が含まれていることが認識されていた.
しかし,既に述べたように,これまでのBCPは,大地震や水害などの自然災害を念頭に置いたものであった点は否めない.
2020年1月にわが国初の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が発生して以来,増減を繰り返しながら徐々に感染者数は増加し,第6波と呼ばれる2022年初頭には,わが国全体では1日に10万人を超える感染者を数えるパンデミックとなった.2年間の経験を踏まえ,順次明らかになるCOVID-19に関する情報に基づき,手探り的に対応してきたというのが実情ではないか.
本稿では,その経験から導き出された教訓を紹介する.
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