焦点 これからの医療の質・安全への取り組み
[対談]産業界と医療界の知の協働をめざして―日本品質管理学会医療の質・安全部会発会を契機に
棟近 雅彦
1,2
,
長谷川 幸子
3,4
1日本品質管理学会医療の質・安全部
2早稲田大学理工学術院
3日本医科大学付属病院医療安全管理部
4日本医科大学付属病院看護部
pp.297-301
発行日 2006年4月10日
Published Date 2006/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100058
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
長谷川 産業界で取り組まれてきた品質管理やTQM(Total Quality Control)の考え方が医療界でも徐々に浸透しつつあり,ここ数年,医療の質に関するマネジメントについてさまざまな取り組みが行なわれてきています。私はいま,病院の安全管理部に所属し,医療安全に関するさまざまなことに取り組んでいて,医療者だけで問題解決する限界を実感しています。例えば,転倒転落の医療事故で,原因分析を進めていくと高齢化社会に即した,聴力・視力・認知・筋力・バランスなどを考慮した患者環境や管理システム,そして病院の構造自体に大きな問題があることがみえてきます。これはこれまでの病院を,患者の生活の場というより,治療する場所としかとらえてこなかった医療者側の考え方だけではみえなかったことです。
患者さんがベッドから立ち上がったときにどんな行動が予測されるかを,個別的に,そして管理システムとしてアプローチしていかなくてはならなかったのですが,これまでそうした観点が少し弱かったと思います。さらに,医療の場合,産業界のように,安全にコストをかけて,商品を出すという考え方が欠けていたのも事実ですから。
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.