焦点 実践に向けた高齢者ケア研究の方向性と課題
痴呆高齢者の摂食困難の評価とケアに関する研究の動向と課題
山田 律子
1
1北海道医療大学看護福祉学部
キーワード:
痴呆高齢者
,
摂食困難
,
食行動
,
栄養
,
ケア
,
環境
Keyword:
痴呆高齢者
,
摂食困難
,
食行動
,
栄養
,
ケア
,
環境
pp.407-421
発行日 2002年10月15日
Published Date 2002/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900691
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はじめに
豊川(1999)は「複雑系としての食」を強調し,人間にとっての食は,1つの学問分野だけではとうてい説明できるものではなく,既存の科学にこだわることなく,新しい包括的で統合的なパラダイムを論考することの必要性を提唱している。
振り返って,施設での痴呆高齢者の食に目を向けた時,基本的欲求としての摂食の域を出ない介助場面がある。これは,特に生物学的にみて咀嚼・嚥下機能に問題があるとは考えにくい痴呆高齢者が「口を閉ざして食べてくれない」「飲み込んでくれない」などの場面で,多くの看護職が経験していることであろう。このような介助場面では,看護職おのおのの問題意識や援助の違いを生じることがあり,「これだ」と確信できる適正なケアの根拠を看護職間で共有できないために不全感をもつ。この原因の一部にはケアスキルの開発の遅れが考えられるが,より大きな原因は,豊川が指摘するように痴呆高齢者の「食」を観察する目の単純さにあったのではあるまいか。
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