研究論文集 原著論文
がん患児を支える母親の内的過程—発病期から末期以前まで
新山 裕惠
1
1大妻女子大学短期大学部
キーワード:
がん患児
,
日本の母親
,
内的過程
,
質的研究
Keyword:
がん患児
,
日本の母親
,
内的過程
,
質的研究
pp.105-118
発行日 1999年4月15日
Published Date 1999/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900495
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
がん患児の研究は,医学,心理学,社会学,文化人類学など広範な分野で行なわれてきたが1-7),患児,母親,家族の生活および経験を記述した包括的研究は,複雑な臨床経過や研究方法への対応の遅れなどの問題があり,手がつけられていないのが現状である。看護学領域でも,経験に基づいた症例報告は多数みられるが,患児およびその家族に焦点をあてて検討し,効果的な看護実践へとつながる結果を提示した研究は少ない8-11)。
筆者には,過去7年間にわたり看護婦としてがん患児の看護に携わり,患児に対する母親の対応を多くの場面で観察してきた経験がある。母親の理解不能な行動の裏に,筆者は母親の「迷い」を観ることもあった。がん患児を支える母親は,行動の表象的形態では均一ではなかった。病名告知を受けたり患児の入院に伴う生活の変化により,発病期のがん患児の母親に動揺のみられることが予想される。寛解導入中の時期には,病気,手術や治療などについての子どもへの説明およびそれらの理解,病気や医療状況の管理,気持ちのコントロールの喪失,不確かさ,無援の感情,気力の低下など精神面での調整がこれら母親の問題点として浮かび上がる12)。治療の著しい進歩により小児がんの死亡率は低下し,小児がんは致死的疾患というよりも,むしろ,慢性疾患としての特徴を備えつつある。
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.